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AIによる予測とは?必要とされる背景や導入メリット、AI活用時の課題と解決策など詳しく解説

AIによる予測とは、AIを活用して今後の状況を推測することです。この記事では、予測AIの基礎知識を解説します。

AIによる予測とは

AIの主な活用用途は「識別」「予測」「実行」の3つと言われています。そのうち、AIによる予測とは、AIを活用して未来に起きる事象を予測したり、未来に生じる値を予測したりすることです。

AIによる予測が必要とされる背景

AIによる予測はデータをもとにしているため、勘や経験といった属人的な要素を加えることなく計算します。そのため人による予測と比べて、予測の精度が高いとされます。少子高齢化の進行によって至るところで労働者不足が懸念される現代、AIによる精度の高い予測が業務効率化や生産性向上を図り、将来深刻化する労働力の不足を解消できると期待されているのです。

AIによる予測を導入する企業が増加している理由

AIによる予測は、労働力不足の解消以外にもさまざまなシーンで活用が期待され、実際にAIを導入する企業が増えています。ここでは、AIによる予測を導入する企業が増加している理由について詳しく解説します。

顧客行動への理解を深めるため

情報化社会における顧客の購買行動は激しく変化しており、企業は顧客の購買行動に合わせた対応を求められています。AIを用いて膨大な顧客データから行動パターンを分析し、次に流行する商品やサービスを予測するのに活かしています。さらに、個人の嗜好を重視して広告戦略を検討したり商品の幅を広く取り揃える等、商品企画から広告戦略までパーソナライゼーションするのが一般的になってきています。多用な顧客のタイプを網羅的に分析し、パーソナライズされた商品やサービスをスピーディーに提供するためにも、AIによる予測は欠かせなくなっています。

「AIの民主化」が進んでいるため

近年は専門知識をもつ人材でなくても簡単にAIを活用できるサービスやパッケージ品が普及し、誰もがAIを導入できる「AIの民主化」が急速に進みました。AI導入の障壁が下がったことで、企業ではAIによって解決する課題や、新たな価値をどう創造するかといった点が重視され、AIを有効活用できるかどうかが企業間の競争力へも大きく影響するようになったのです。

セキュリティ対策に活かせる

また、AIによる予測はセキュリティ対策へも活用が期待されています。例えば監視カメラの映像解析にAIを活用し、膨大な量の映像を分析することで、映像から微細な変化を読み取り、異常な行動や状態を予測します。監視カメラの映像を人が時間をかけて確認するのではなく、AIで人の行動を予測し、リアルタイムかつ正確に危険因子を検出することで防犯対策に活かすことができます。

予測AIを活用している事例

AIを用いた予測は実際のビジネスシーンで活用されています。ここでは事例を紹介します。

 

未来の物事に関する発生予測


水道管の劣化予測

水道管の劣化予測にはAIが活用されています。水道管は、劣化するとパイプに亀裂が生じ、破裂して周辺が浸水したり水が逆流する恐れがあります。このような事態を避けるため、水道管の素材や配管環境、使用年数等から経年劣化を予測します。さらに、AIでは膨大なデータを処理することもできるため、自然災害による周辺の地盤の変化や、近接するパイプの漏水歴・破損歴等といったさまざまな環境要因も合わせて分析し、高精度に劣化状態を予測することができます。万一の被害に至る前に点検を行い、事故防止に活かされています。

インフルエンザの流行予報

ある企業では、インフルエンザの流行を予測するためにAIを活用しています。過去の感染症データ等から4週間先までのインフルエンザ罹患者数を地域ごとに予測し、4段階の指標で予報を配信する仕組みを構築しました。流行予報を知ることで外出自粛や予防接種の実施といった予防行動を事前に行うことができます。

不整脈の発症予測

AIによる予測は、体の健康を守るために活用することもできます。ある企業では、不整脈の発症をAIで予測する仕組みを開発しました。発作が起きていなくても診断や予測ができる技術が開発されており、今後の展望に期待が寄せられています。

未来の数値予測


不動産資産価値

不動産資産の価値予測にもAIが活用されています。日経平均株価指数や過去の落札に関するデータを分析して、10年後の不動産価値を予測する仕組みです。これによって、将来の推定価値を参考にすることができるので、より長期的な目線で不動産購入を促すために活用されています。

着雪量予測

新幹線車両の着雪を予測するためにAIが活用されている事例もあります。着雪量が増えると、車両に雪が付着し、走行中に危険が生じます。AIを用いて車両の着雪量を予測することで、雪落としの作業の必要可否がわかり、必要に応じて人材配置を行うことができます。

予測AIに使用するアルゴリズムの種類

予測AIにはさまざまなアルゴリズムが使われます。ここではアルゴリズムの種類をくわしく解説します。

 

回帰

回帰は、数値による大量のデータをもとにして予測するアルゴリズムです。ボートレースの結果やFXの値動きの予測に活用されています。

線形回帰

線形回帰は、直線で表せる関係を仮定して予測するアルゴリズムです。損失関数や最小勾配法などの関数を使用し、最適な分類ができるよう調整して予測を行います。たとえば株価や失業率などの予測に活用されています。

自己回帰モデル

自己回帰モデルとは、現在と過去の値を比較して未来の値を予測するアルゴリズムです。自己回帰モデルは、ARモデルとよばれる場合もあります。線形回帰と同様に株価や失業率といった経済指標の予測に活用されています。線形回帰との違いとしては、過去の値を用いる点です。

分類

分類は、もともと用意されている答えにあわせてデータをカテゴライズするアルゴリズムで「教師あり学習」に該当します。たとえば写真に写っているものが何であるか、事前に与えられたラベルのどちらかに分類していく手法です。

※教師あり学習について、詳しくはこちらをご覧ください
https://www.eaglys.co.jp/news/column/ai/model

 

クラスタリング

クラスタリングは「教師なし学習」によってデータを分類するアルゴリズムです。大量のデータから類似しているパターンを見つけ出します。分類と違って、基本とするカテゴリを与えられていないのが特徴です。

次元削減

次元削減とは、データの次元を減らして分析するアルゴリズムです。データが多すぎるとかえって分析の精度が下がる場合があるため、次元削減が必要とされています。次元削減により、データの圧縮や可視化などが可能です。

 

異常検知

異常検知とは、機械学習によって故障や不具合を推測するアルゴリズムです。正常ではない値や、それまで発生していない未知のパターンや複雑なパターンについても予測できます。

決定木

決定木は、データを分割して可視化するモデルを作って予測するアルゴリズムです。ひとつのテーマについて質問を繰り返し、結論にたどり着きます。意思決定のために活用される場合が多いです。

ニューラルネットワーク

ニューラルネットワークは、脳神経系のニューロンを数理モデル化したアルゴリズムです。「入力層」「出力層」「隠れ層」によって構成されており、各層で分析の精度を高めながら最終的な結論を導き出します。

再帰型ニューラルネットワーク(RNN)

再帰型ニューラルネットワーク(RNN)は、自然言語処理ができるアルゴリズムです。ニューラルネットワークをさらに応用し、時系列に並ぶデータを扱えるようにしたものです。

AIによる予測を導入するメリット

AIによる予測を導入するメリットについて具体的に解説します。

 

企業競争力を向上させられる

AIを活用することで企業としての競争力向上につなげることができます。例えば、顧客データをAIで分析することによって多様化する顧客行動について理解を深め、商品の企画やマーケティング戦略の立案に活かされています。また、防犯カメラの映像から犯罪傾向を予測して万引の防止につなげることができれば、商品・サービスを安全に安定的に提供し続けられるため、顧客からの信頼や評価に直結し、企業の競争力の維持向上へもつなげられるのです。

業務効率化が可能になる

AIは大量のデータを処理するため、データが多いほど高精度に予測できます。習慣化していたことで無駄が見えづらくなっていた業務においては、データを元に分析して人員配置やコストを見直すこともできます。業務時間が短縮できれば、その分別の業務に時間を使うことができ、利益を拡大させるための取り組みにも着手できます。

最適化を図れる

AIによる予測を活用すれば、ビジネスのさまざまな場面で最適化を図れます。たとえば在庫管理では商品の発注タイミングや発注量の最適化に活かされています。在庫の消化スピードや過去の発注履歴から、必要になる在庫量やタイミングを高精度に予測し、不要な発注をしたり欠品が生じたりするリスクを防止します。必要となったときに必要な商材が手に入ることで、ユーザーニーズを満たし、さらなる企業価値の向上につなげることができます。

様々なロスを削減できる

AIの予測はロスの削減にもつながっています。たとえば、飲食業では来店予測や発注予測をすることで、深刻化するフードロスの対策にもなります。AIによる正確な来客予測に基づいて食材を用意すれば、使い切れない食材や作りすぎた食材の廃棄量も減らすことができますし、フードロスが削減されれば、同時に廃棄にかかるコストもかからなくなります。さらに、資源や環境に配慮した経営を実現し、企業の評価につながることも期待できます。

AIを予測に活用するフロー

AIを予測に活用するためには、収集したデータに対してデータプレパレーションを行う必要があります。データプレパレーションとは、データを加工したり変換したりする手法で、AIがデータを適切に扱えるようにすることです。そのうえで予測のために使用するアルゴリズムを選定し、学習モデルを生成して実際に予測を行います。

その後、予測の結果を評価し、最適化するために改善する必要があります。自動で学習モデルを更新できるようにすると、AIによる予測の精度を高めやすくなるでしょう。

AIを予測に活用する際の課題と解決策

AIを予測に活用するうえでは課題もあります。ここでは課題と解決策について解説します。

適切なデータ収集が必要

AIによる予測の精度を高めるには、適切なデータを集める必要があります。データの質・量を見極め、社内外からデータを収集します。自社で用意できない場合は外部から購入したり関連企業からの提供を促す方法があります。また、必要に応じて不足データを生成するためにもAIを用いる等、さまざまな方法でデータを収集していきます。

「前処理」に人的負荷がかかる

データ収集ができたら、AIが活用できる状態にデータを整える「前処理」に移ります。この作業を人手で行うには膨大なコストがかかり、AIを活用する際の障壁となっていました。

前処理における人間の負担を削減するには、データプレパレーションを活用する方法があります。データプレパレーションとは前処理において分析に必要なデータ加工や変換を行い、スムーズに分析を開始できるようにするプロセスのことです。これを活用すれば、前処理にかかる工数を大幅に減らすことができます。

予測精度向上を自動化する必要がある

マーケティング部門や営業部門でAIによる予測を活用するには、アルゴリズムやモデルの作成を自動化する必要があります。そのためには、データの更新やモデルのチューニングができるサービスを活用すると便利です。

EAGLYSのAI解析支援サービスでは、社内で収集したデータが不足している場合、既存のデータから不足している部分を補完することができます。

まとめ

AIを用いることでさまざまな予測を正確に行えるようになります。あらゆるシーンで活用できるため、AIによる予測を導入する企業も続々と増えている状況です。AIによる予測を活用することで、企業の競争力をさらに高めることができます。

しかし、実際に活用するまでには、適切なデータ収集や加工といった準備が必要になります。この準備に工数がさけない方は少なくありません。

EAGLYSでは、個別の要件に適した精度のAIモデルを独自に開発しています。AI導入を検討した背景から伺い、構想段階から課題解決に向けて最適なモデルを設計が可能です。

AIによる予測の活用について幅広い知見がございますので、お気軽にご相談ください。

 

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