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AIの技術力は年々高まっていて、AIを活用できることが増えています。それにともなって、AIはさらに関心を集めており、AIを導入して業務効率化や生産性向上を目指す企業も多くなってきています。この記事では企業がAIを導入することで得られるメリットについて解説します。ぜひ今後の業務にお役立てください。
日本のAI導入の現状と課題
近年、AIに関連したニュースが日本でも多く取り扱われています。しかし、世界的に見ると日本はまだ「AI先進国」とは言えません。技術力や利用意識といった多くの観点で、AI分野でトップを走るアメリカや中国の背中を追いかけているのが現状です。
その背景として、データ取得ができるIT機器の普及不足や、AI開発や解析のための人材不足が挙げられています。
また、日本ではAIの導入が一般化されていないため、AIを使用することで事故や過失が起きた際の責任の所在が明確化されていません。このことから導入を躊躇している企業もあります。
企業のAI導入率
2018年のボストンコンサルティンググループの調査によると、自社のAI導入を「概ね成功している」と評価した企業の割合は、中国85%、アメリカ51%に対し、日本は39%でした。これは、調査対象であるアメリカ、オーストリア、スイス、中国、ドイツ、日本、フランスの7カ国のなかで最も低い割合です。とはいえ、中国を除く6カ国には大きな差はなく、挽回することは可能であると言えます。
※参考:BCG、企業の人工知能(AI)の導入状況に関する各国調査を発表|BCG
超高齢化が進む日本ではAIが必要不可欠
日本では高齢化が進んでおり、2019年には高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口の割合)が28.4%になりました。同時に、15歳から64歳の生産年齢人口はさらに減少していくと予測されています。このような社会において、より少ない人員で業務をこなし人手不足を解消することが各企業に求められます。そのため、金融業、製造業のみならず、どの業界でもAIによる業務の代替が課題となっています。超高齢化が進む日本だからこそAI導入が必要不可欠だと言えます。
AIを導入することで労働量を減らせるほか、生産性を向上できます。詳しくは以下で解説します。
AIを導入するメリット
AIを導入すると、企業に以下のようなメリットがあります。
労働力不足の改善
先述の通り、超高齢化が進む日本では労働力不足が懸念されています。特に、危険が伴ったり肉体労働が多くなりやすい職種は、他の仕事に比べて人が集まりにくいと言われています。そこでAIを導入して自動化を進めることで、労働力不足を解消することができます。
生産性の向上
単純な作業を繰り返したり、細かい作業を行うことはAIの得意分野です。人間が手作業で行う場合、見落としや確認もれによって単純作業でもミスが発生することがあります。AIの場合、高い正確性で作業を行うことができるため、やり直しや修正といったタイムロスを削減することができます。
また、体調や精神状態に左右されることがなく、業務の質を高い水準で保つことができます。
結果として生産性の向上につながるので、浮いたリソースを別の業務に割り当てることも可能になるでしょう。
利便性が高まる
AIが活用されているサービスはどんどん増え、私たちの生活を便利にしています。
代表的な例として、インターネットショッピングにおける「おすすめ商品」があげられます。「おすすめ商品」とは、その人の興味があるもの、過去の買い物履歴などから自動的におすすめ商品を紹介する機能です。顧客は自分にあった商品を知ることができ、販売者は売上を上げることができるため、双方にとってメリットのある機能といえます。そのほか、入力する単語を予測して変換する予測変換、音声で情報を伝える音声認識などもAIを使った技術です。最近だとAIが搭載された家電も普及しています。
このようなサービスを活用することで生活の利便性をさらに高めることができます。
安全性の向上
AIを活用することで、さまざまな事故を防ぐことができます。
たとえば、自動運転車によって交通事故を減らすことができます。自動運転車のすべてのシステムが正しく作動していて法規を守っていれば、およそ9割の死傷事故を防げると言われています。
また、少しのミスが大事故を引き起こす可能性のあるインフラ設備の点検も、AI技術も用いることで正確に進められます。
さらに、高所や毒物が扱われる施設、原子力発電所など、人が立ち入ると危険な場所での作業も、AIに代替すれば安全性を向上することができます。
業界別のAI導入・成功事例
AIはさまざまな業界で導入されています。ここでは、業界別にAI導入の成功事例を紹介します。
製造業界
製造業界では、ロボットを用いることが多く、AI技術でさらなる業務の効率化が実現できます。たとえば、国内の自動車メーカーでは、外観目視では検出できないキズを見つける磁気探傷検査をAIにより自動化しています。一般的な*マシンビジョンの不良品の見逃し率は32%、良品を不良品と判定してしまう過検出率は35%でした。しかし、AIで自動化された検査では、見逃し率が0%、過検出率は8%となり業務が大きく改善されました。
*画像の取り込みと処理に基づいて機器を動作させるシステム
従来の外観目視検査や磁気探傷検査では熟練の検査技術者の手を借りなければなリません。そのため属人化や後継者不足が問題となっています。AIによるデータ分析を活用すれば、経験の深さにかかわらず、だれでも安定した作業が可能です。
※製造業界でのAI活用事例はこちらをご参照ください。
小売業界
小売業界では、大量の注文や在庫を管理しなければなりません。ある化粧品メーカーでは、はがきやFAXで受けた手書きの注文を、AI技術を活用した文字認識機能でテキスト化するようにしました。結果として、1ヶ月で700時間ほどハガキやFAXを読み取る時間を削減できています。
また、小売業界では在庫管理を参考に商品の受発注を行う必要があります。AI技術で在庫管理を効率化すれば、廃棄ロスを最小限にすることができます。
※小売業界でのAI活用事例はこちらをご参照ください。
飲食業界
飲食業界では、食品ロスが課題となっています。とある回転寿司チェーン店でも、回転レーンに寿司を流しても、食べられずに廃棄してしまうことが多発していました。そこで、どの寿司にどのくらい需要があるのかAIで予測してレーンに流す寿司を調整したところ、寿司の廃棄率を75%程度削減することに成功しています。
人間による需要予測は、経験則や感覚といった主観的な考えで行われることが多くあります。AIは膨大なデータから客観的に分析するため、より正確に予測することが可能です。
物流業界
インターネットが普及し、店舗で購入せずにオンラインでショッピングをする人が増加しています。それにともないオンライン市場は拡大し、物流量も増大しています。
このような状況に対応すべく、運送会社では荷物の量をAIにより予測し、それに適した人材や車両の配置を行っています。これにより、キャパシティを越えた荷物を抱えるリスク、反対にリソースが余るリスクを軽減することが可能です。また、集荷や再配達の電話受付を自動化することにより、電話対応における業務量の減少にも成功しています。
※物流業界でのAI活用事例はこちらをご参照ください。
業界問わず活用されている例
上記の業界独特な活用方法のほか、顧客からの問い合わせ対応にAIを用いる企業も増えています。チャットボットや、手書き書類のデータ化などは導入しやすいAIの代表例です。
また、AI技術はマーケティングにも活用可能です。たとえば、AIが顧客データを分析することで、顧客に適したメール配信やウェビナーの案内といったアプローチを自動的に行うことができます。
AIを導入するまでの流れ
実際にAIを導入するためには、以下のような流れで行います。
必要なデータを収集する
AIは、大量のデータから規則性を発見しそれに応じて出力を行う、という仕組みです。そのため、AIが正確な分析や予測を行うためには、膨大なデータが必要になります。データ量が少ないと正しい分析結果を得られない可能性があります。過去の社内データ等から、多くのデータを集めることが必要です。また、複数の企業でデータを連携・共有することでデータ量を確保する方法もあります。
※データの連携について、詳しくはこちらをご参照ください
学習させる
機械学習を採用しているAIは、膨大なデータから規則性や法則を抽出します。正しく機械学習を行うためには、AIに関する専門的な知識や技能が必要です。適した人材がいない場合は、外注もしくは新たに雇用することが検討されます。また、機械学習に関連するツールはさまざまなので、業種や担当者の技能によって選ぶ必要があります。
プログラムによりアルゴリズムを開発する
膨大なデータを収集し学習した後は、出力結果を活用するためにプログラミングでアルゴリズム開発を行います。機械学習と同じく、プログラミングにも専門知識が必要です。アルゴリズムは都度評価し、精度を向上していく必要があります。
AIの今後の動向
日本では労働力の確保や生産性の向上に向けてAIのニーズが高まっています。AIを導入することで省人化や業務効率化が進むので、新たなビジネスチャンスを見出せるかもしれません。
AI導入を成功させるためのポイント
企業でAI導入をスムーズに成功させるためには、以下のようなポイントに留意してください。。
AIの業務範囲を検討する
AIですべての業務課題が解決するのではありません。費用対効果を検討した上で、効率化するべき業務範囲に合わせたものを導入する必要があります。AIに代替する業務範囲を間違えると思っていたような成果が出ないことが考えられます。AIに委任する業務範囲を定義した上で検討を進めることが重要です。
AI専門の外部開発者を活用する
AIを効果的に導入するためには、集めるデータの種類を見極め、AIを機能させる必要があります。どの工程でも高い専門知識が求められるのは事実です。外部企業にAI開発や分析を依頼することで、効果的かつスムーズにAIを導入する方法も選択肢の一つとして検討することができます。
導入後の目的・目標を明確にする
AIを導入することで何を改善するのか目的を明確にすることも重要です。目的を定めることで本質的な課題が見えてくるため、どのAIで解決できるのか、そもそもAIでなければ解決できないのか検討することができます。AI導入の目的を見誤らず、AI導入はあくまでも手段であると認識することが大事です。
まとめ
AIは今後必要不可欠な技術です。AIを活用することでビジネスを発展させ、競合優位性を保つことも可能です。他社の成功事例を参考にしながら、自社でどのような業務にAIを活用できるか検討することが大切です。
AIを導入して成果を上げるためには、専門の企業に相談し最適な導入方法を知ることがおすすめです。EAGLYSでは、AI導入において構想策定から協働してアイデアを具現化します。AIアルゴリズムに関する確かな設計技術をもち、あらゆる種類のモデル設計を行います。
AI導入を検討される方は、ご遠慮なくご相談ください。