コラム

ナレッジグラフとは?仕組みと活用事例をわかりやすく解説

作成者: EAGLYS株式会社|Sep 18, 2026, 3:07:57 AM


「ナレッジグラフ」という言葉を最近よく耳にするようになった、という方も多いのではないでしょうか。生成AIの活用が進む中で、その回答の精度や信頼性を支える技術として改めて注目を集めています。

本コラムでは、ナレッジグラフとは何かという基本的な内容から、業界ごとの活用事例、導入する際のポイントまでをわかりやすく解説します。

 

ナレッジグラフの概要

ナレッジグラフとは、モノやコトの「つながり」をデータとして表現する仕組みのことです。

たとえば「A社」と「B社」が取引関係にある、「田中さん」が「営業部」に所属している、といった情報同士のつながりを、点と線で結びながら蓄積していきます。人間が頭の中で物事を関連づけて理解するのと似た形で、コンピュータに情報同士の関係性を理解させる技術。それがナレッジグラフです。

これまで多くの企業システムでは、情報は表(テーブル)形式で管理されてきました。顧客一覧、商品一覧、取引履歴といったように、それぞれが別々の表に格納されているイメージです。この方式は個々のデータを正確に記録するには適していますが、「この顧客はどの商品をよく購入していて、その商品を扱う担当者は誰か」といった、複数の表をまたいだ関係性を追いかけるのは苦手です。ナレッジグラフでは、情報を「点(モノ・コト)」として表し、それらの間を「線(関係性)」でつなぎます。たとえば、次のようなイメージです。

このように点と線をたどっていくことで、表形式では見えにくかった情報同士のつながりを、直感的に把握できるようになります。図で表すと、まさに人脈相関図や路線図のような見た目になることが多く、これが「グラフ」と呼ばれる理由です。

 

 

なぜ今、注目されているのか



近年ナレッジグラフが改めて注目されている大きな理由のひとつが、生成AIとの組み合わせです。生成AIは自然な文章を作る一方で、事実に基づかない内容を答えてしまう「ハルシネーション」という課題を抱えています。ここにナレッジグラフを組み合わせることで、AIが根拠となる正確な情報のつながりを参照しながら回答できるようになり、より信頼性の高い回答生成につながると期待されています。

ナレッジグラフを導入することで、情報が部門ごとに散らばっていたために起きていた見落としを防ぎ、部門をまたいだデータ連携がしやすくなります。また、関連情報をすぐにたどれるようになることで、意思決定のスピードも上がります。検索してもなかなか見つからなかった情報も、つながりをたどることで発見しやすくなる点も大きな利点です。

一方で、ナレッジグラフは「入れればすぐ効果が出る」というものではなく、既存のデータをつながりとして整理し直す作業には一定の工数がかかります。また、既存の業務システムとの連携方法についても事前の設計が必要です。自社のどのデータをどうつなげたいのか、整理したうえで進めることが必要になってきます。

 

 

業界別の活用事例

ナレッジグラフの活用は特定の業界にとどまらず、さまざまな分野で広がりを見せています。
ここでは代表的な3つの業界における活用例をご紹介します。

製造業:部品・サプライチェーンの可視化

どの部品がどの製品に使われていて、どのサプライヤーから調達しているのか。こうした関係性を一元的に把握することで、部品の供給が止まった際に、どの製品にどれくらいの影響が出るかを素早く判断できるようになります。

金融:不正検知・与信判断

取引先同士のつながりや資金の流れを可視化することで、通常のパターンから外れた不自然な関係性を発見しやすくなり、不正取引の検知や与信判断の精度向上に役立てられています。

医療・製薬:論文・症例のつながり分析

膨大な論文や症例データの中から、疾患・薬剤・遺伝子といった要素同士の関係性を整理することで、新たな治療法や薬剤候補の発見につながる知見を得やすくなります。


実はナレッジグラフは、すでに私たちの日常でも使われています。Googleで人物名や企業名を検索したときに、画面右側に表示される情報パネル(ナレッジパネル)は、まさにナレッジグラフの技術を活用した代表例です。

 

技術的な解説:もう少し詳しく知りたい方へ

ここまでの内容だけでも全体像はつかめますが、実際に導入を検討する段階になると、もう少し技術的な仕組みを知っておきたいという方もいらっしゃると思います。ここでは代表的な考え方を簡単に補足します。

情報を「主語・述語・目的語」で表す「トリプル」構造

ナレッジグラフの多くは、情報を「主語(誰が)」「述語(どうした)」「目的語(何を)」という3つの要素の組み合わせで表現します。この組み合わせを「トリプル」と呼びます。たとえば「田中さんが営業部に所属する」という情報は、「田中さん(主語)」「所属する(述語)」「営業部(目的語)」という1つのトリプルになります。このシンプルな構造を大量に積み重ねることで、複雑なつながりを表現できるようになります。

グラフデータベースという専用の保存先

ナレッジグラフのトリプルを効率よく保存・検索するために、「グラフデータベース」と呼ばれる専用のデータベースが使われることが一般的です。従来の表形式のデータベースが「行と列」で情報を管理するのに対し、グラフデータベースは「点と点のつながり」を直接データとして持つため、関係性をたどる検索を高速に行えるという特徴があります。

オントロジー:情報を整理するための「共通のルール」

大量のトリプルを意味のあるつながりとして扱うためには、「会社」「人物」「製品」といった情報の種類や、それらの間にどのような関係が成立しうるかをあらかじめ定義しておく必要があります。この定義のことを「オントロジー」と呼びます。オントロジーを整理しておくことで、異なる部門・システムのデータであっても、同じルールに基づいてつなぎ合わせられるようになります。

データはどう作られるのか:抽出とAIの活用

社内に散らばる文書やデータベースから、こうしたトリプルを一つひとつ手作業で作るのは現実的ではありません。実際には、自然言語処理や生成AI・LLMを使って、契約書や議事録、既存のデータベースなどから情報のつながりを自動的に抽出し、ナレッジグラフを構築していく方法が広く使われています。

 

 

まとめ

ここまで、ナレッジグラフの基本的な仕組みから業界別の活用事例、導入時の留意点までをご紹介してきました。要点をまとめると、以下の3点になります。

  • ナレッジグラフは、情報同士の「つながり」を可視化し、活用するための技術

  • 生成AIにナレッジグラフの根拠あるつながりを参照させることで、ハルシネーションを防ぎ、精度の高い回答が得られると注目されている

  • 製造業・金融・医療をはじめさまざまな業界で、意思決定の高速化やデータ活用の高度化に活用されている

※本記事に記載されている会社名・製品名・サービス名は、各社の商標または登録商標です。