コラム

FHE.org 2026 Conference & Real World Crypto 2026 参加レポート

作成者: EAGLYS株式会社|May 19, 2026 2:13:43 AM

 

EAGLYSリサーチャーの若杉です。普段は秘密計算、特に準同型暗号の研究開発業務に取り組んでいます。

2026年3月台湾の台北にて、完全準同型暗号(Fully Homomorphic Encryption,FHE)に関するワークショップ FHE.org 2026 Conferenceと 、暗号技術における世界最高峰の学会 Real World Crypto 2026 が開催されました。本カンファレンスでは、最先端の秘密計算技術や現実のシステムにおける暗号技術に関して、世界中の暗号研究者や開発者がその成果を発表します。論文でよく名前を見かけるような一流の方が発表されることも珍しくありません。

EAGLYSでは完全準同型暗号の最新動向をキャッチアップするため、社内の暗号研究者が現地台湾に行って聴講してきましたので、その様子をお伝えできればと思います。それぞれの学会のページは下記になります。

また、本学会へは、昨年も聴講し、参加レポートを出しています。
そちらも合わせてご参照いただけたらと思います。

3月7日:日本から台湾へ移動

日本時間の3月7日 13 時ごろに羽田空港を出発し、現地時間で同日 16 時ごろ(日本時間で17時ごろ)台湾に到着。日本でも馴染みのあるコンビニがありましたが、日本語が通じるわけもないため、違和感がありました。

3月8日:FHE.org 2026 Conference

初日はFHE.org 2026 Conferenceに参加しました。準同型暗号の実用化と普及に向けたコミュニティプラットフォーム、FHE.orgが主催する学会です。実はEAGLYSが例年スポンサーとしても参画している学会で、今年も会場にはEAGLYSのロゴが掲載されていました。参加者は昨年より多い印象でおよそ80〜90人ほど。日本からも、私たちを含めて10名ほど参加しているように見受けられました。

本学会では、完全準同型暗号の提案者である Craig Gentry (クレイグ・ジェントリー)氏の論文に関する発表もありました。昨年の FHE.org 2025 Conference での招待講演にも関連する発表でした。多くの完全準同型暗号方式では、メッセージの形式として、スカラー(数)やベクトルが想定されていますが、行列を想定することで、暗号文状態での行列演算の高速化を図る内容です。なお、本発表は論文投稿もされておりますので、興味のある方は下記URLよりご閲覧ください。

「学会」と聞くと、重苦しい雰囲気を想定される方もいらっしゃるかもしれませんが、FHE.org 2026 Conferenceでは気さくにディスカッションや交流をしている参加者が多かったです。プレゼンテーションのセッションと並行してポスターセッションも開催されていたため、発表の休憩時間中も含めて、常に準同型暗号のことを考える1日となりました。

▲ FHE.org 2026 Conferenceのノベルティ

 

3月9日〜11日:Real World Crypto 2026

翌日からは3日間、同じく台湾で開催されたReal World Crypto 2026に参加してきました。暗号学研究者と実装する開発者を結びつけ、両コミュニティ間の対話の強化を目指している学会です。発表に加えて、耐量子計算機暗号に関する議論、マルチパーティ計算の実世界応用、といったワークショップも開催されました。

韓国にある、準同型暗号の研究開発を行っている Cryptolab の研究者の招待講演がありました。先ほどの、Gentry 氏の内容にも関連しますが、暗号文状態での行列積を高速化することで、リアルタイムで暗号文での RAG や物体検知を行うデモを紹介していました。現在の完全準同型暗号は第4世代までですが、暗号文状態での行列積に関する Cryptolab の論文群は、第4.5世代と紹介されていました。その初期の論文について、興味のある方は下記URLよりご閲覧ください。

Real World Crypto 2026は、600名ほどの参加者だったと記憶しています。こちらも日本からも多くの方が参加されていました。毎日昼食がバイキング形式で提供されるのですが、非常に長い列だったことを覚えています。

▲ Real World Crypto 2026のバイキング

 

暗号理論や技術に関する世界トップレベルの学会はほかにもありますが、FHE.org や Real World Crypto は、理論的な内容が少ないためか、カジュアルな雰囲気で発表を聴講することができます。実際、Real World Crypto の途中ではLightning Talk も開催され、さまざまなワークショップの案内が発表されたりしましたが、終始コミカルな雰囲気でした。

準同型暗号のみならず、一般的な暗号理論および技術に関しても非常に多くの知見が得られました。特に、暗号文状態での行列積は、弊社でも行っている研究テーマであり、今後どのように改善していけば良いかの指標を得られました。弊社もこれらのコミュニティで発表できるよう、日々の研究開発業務を加速させていきたいと考えています。

 

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