コラム

【事例で理解する】データ活用で実現できることとは。

作成者: EAGLYS株式会社|Mar 3, 2022 3:00:00 PM

IT技術の進化によって情報があふれ、ユーザーのニーズが多様化したことで、企業はデータ活用による新たなビジネス創造に取り組み始めています。

しかし、データ活用に取り組む際には、セキュリティ対策はもちろん目的に沿った手順や活用方法を選ぶ必要があるため、事前の調査や期待値のすり合わせが重要です。

今回は新たな価値創造のためにデータ活用を検討している方に向けて、事例をもとにデータ活用で実現できることを紹介します。

データ活用とは蓄積されたデータを「価値」に変えること

データ活用とは、蓄積されたデータを分析・統計処理を行い、業務効率化や生産性向上に結びつけることです。その他にもデータ活用は、新製品の販売市場を模索したり競合他社との差別化・ポジショニングを検討したりといった、新しい価値の創造に取り組むことができます。

(※この記事ではデータの活用で価値を生み出す行為を広く「データ活用」として定義し、解説します。)

データ活用の背景


最新のIT技術の発展やグローバル競争の激化等を背景に、ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変化しています。この状況に対し、売上拡大や顧客満足度向上によって競争力を強化すべく、企業は顧客データや経済データ、位置情報等を掛け合わせて消費の傾向を高精度に予測する等、あらゆる種類のデータの活用に取り組んでいます。

データ活用に向けて事前に取り組むこと


効果的かつ効果的なデータ活用に取り組むためには事前の目的設定が重要です。

データ活用では、メリットや目的によってデータ収集方法が異なるため、事前にどんな目的で、どんなデータが必要なのかについて検討が必要があります。特に、現行業務の効率化や高精度の予測による生産最適化は、過去実績や履歴データのみでは高精度な分析の算出が難しい場合が考えられます。詳しくはのちほど紹介します。

また、データ活用を行う上では、データの機密性担保やデータ活用時のセキュリティ対策を正しく行うことも重要です。

たとえば新素材の研究開発や顧客の購買履歴から販促施策を検討する等、活用したいデータは集めれば集めるほど機密性が高まり、プライバシー・セキュリティへの対策はもはや避けて通ることはできません。

企業がデータ活用に取り組む上で必要な対策について別記事で詳しく解説しています。
こちらよりご確認ください

 

【目的別】データ活用事例4選

データの活用方法はデータの種類や管掌部門、企業規模によってさまざまですが、総務省によると、大企業を中心に自社データ、GPSデータやセンサーデータ等を集め、集計や統計に使う傾向があります。データ活用にはデータセキュリティやプライバシーの確保といった障壁があるものの、高度な活用によりさらなる付加価値が生み出されることが期待されています。

ここではEAGLYSの事例をもとに代表的なデータ活用方法を、達成するメリット別に紹介します。

1.【配送プロセスの効率化】サプライチェーンの出荷・配送の最適化


■課題

サプライチェーンのプレイヤーは、製造から物流、小売まで商品がスムーズに連携できるよう長年の経験や過去の受注データから予測値を算出し、物量をコントロールしてきました。しかし近年のEC市場の需要増加や社会経済の変動により、急な需要増に対応できず商品が欠品になるケースや、配送トラックの枯渇問題等さまざまな問題が顕在化してきています。

サプライチェーンでは、物(商品)は上流から下流に流れ、データも必要になった時に必要な部分を切り出して都度共有されていました。そのためFAXで発注データを受け取り、手作業で受発注管理システムに入力し、生産管理部門への連携はメール。新たな素材調達からの製品設計図の修正はセキュリティルームに移動して行い、その試作品発注に関わる情報はセキュリティ便で厳重な対策を施して送る等、データ管理やセキュリティ対策に関わるデータ処理の工数は、データ送信側も受信側も抱えざるをえませんでした。これによりサプライチェーン全体でのデータ処理工数は増幅し、リアルタイムでの情報伝達は難しく、組織の壁を超えて高精度の需要予測を行うことが困難でした。

■データ連携でできること

EAGLYSの秘密計算ソリューションを用いることで、データ加工作業がなくともデータの一部を秘匿にしたまま必要な情報だけを開示し、発注される商品の量を見越した出荷量のコントロールが可能です。

さらにサプライチェーン間の供給の最適化で、荷待ちトラックの排気ガス削減といった環境に配慮した取り組みや、あらかじめ需要を見越して素材の調達・出荷量を確保しておくなどサプライチェーン全体の最適化が可能です。

 

2.【データ連携による販促戦略】乗降データと購買データを組み合わせたマーケティング施策の立案


■課題

近年、個人情報保護法の改正やGDPR等の法規制強化や、大企業による顧客情報の漏えい事件が大きく報道されている状況から、パーソナルデータの取り扱いやその活用に向けた企業の対応が見直されています。顧客情報の活用は企業が販促戦略を強化する上で必須事項である一方、悪意のある第三者からの攻撃が多様化している現代では、顧客の属性情報や購買履歴等の活用にはプライバシーとセキュリティの対策が必須です。

某社では乗降データや決済データといったパーソナルデータに密接に関わる情報を販促戦略等に用いる際、厳重なデータ取り扱いルールのもとマスキング処理等の加工を行っていたものの、重要な部分が隠されてしまうため分析会社は不十分なデータを使わねばならず、結果として分析精度が上がらないといった課題がありました。

■データ連携で実現できること

秘密計算ソリューションによって、パーソナルデータ等の機密性の高いデータも部分的に秘匿にしたまま連携し、これまでデータ分析専門会社に分析データを共有する際にも発生していた加工作業をなくし、手早く必要な情報のみを開示します。購買にいたる顧客の行動を高い解像度で確認できるため、シチュエーションや好み、タイミング等を最適化した販促戦略を模索したり、不動産戦略等に生かしていくことができます。

 

3.【想定外のパターンを検知】不正取引事例の学習で、高いレベルのセキュリティを実現


■課題

金融機関では相次ぐ不正取引や特殊詐欺を防ぐため、これまでアクセスログや不正取引の傾向データを各銀行の分析基盤で解析し、対策を講じてきました。しかしマシンスペックが上がるほどに詐欺の手口も多様化し、攻撃も激しさを増しています。各銀行における対策費用は増加の一途をたどり、金融業界全体の負担となっています。

■データ連携で実現できること

従来、各行で行っていた不正取引事例のデータ解析と対策を複数行で集め、対応ができれば詐欺手口の多様化や高度化への対策にも網羅性が生まれます。

EAGLYSは秘密計算ソリューションによって、口座利用者データと密接にむすびつく取引データを秘匿しながら不正取引事例や詐欺傾向のみを共有。複数の銀行で分析結果を共有し改善を繰り返すことで、金融業界全体での不正取引対策に効果をもたらします。

 

4.【個別化医療の実現】データ連携で一人ひとりにあった治療法の選択


■課題

医療データの活用はこれまで医療機関や研究機関ごとに行われてきました。特定の疾患への研究や地域の医療格差是正、個人に最適化する個別化医療に向けた法規制の整備、研究開発が進む一方、医療データはパーソナルデータに近く高度な分析を行うほどに機密性が高まるため、他の医療機関での転用が障壁となっていました。

 ■データ連携で実現できること

秘密計算ソリューションを用いて複数の医療機関で最新の疾患や治療法の研究、問診データ等を連携することで、他機関での類似ケースへの適応や遠隔地域での医師不足の支援が可能になります。秘密計算によって隠しておきたいデータ種別を秘匿にしつつ、他機関で活用したい情報のみを開示。アクセスできる情報を管理しながらも、医師の診断支援や個人の病状に最適な診断・処置が可能です。

まとめ

IT技術の発展やグローバル競争の激化にともない、企業によるデータ活用は盛んに行われています。しかし、新規事業の立案や既存事業の競争力強化に向けた他社間のデータ連携は、プライバシーとセキュリティの担保が課題となり、進みづらい状況です。また、データ活用が設計した目的に対してデータ入手コストやセキュリティ対策コストが見合わないケースも散見されます。

このように、データ活用にはプライバシー・セキュリティ対策、そしてそれらにかかる費用までを見通した上で、データ活用に取り組む必要があります。

EAGLYSでは、セキュリティ対策を行うとともにデータ活用を実現したい方に向けたソリューションを提供しています。新しい暗号化技術である「秘密計算」を用いて、データを秘匿しながらの連携・共有ができます。また、活用したいデータが不足している場合、EAGLYSのAI解析サービスで個別に必要なデータを類推・生成して補うことも可能です。

本記事に紹介したデータ活用目的別の事例のほか、EAGLYSはデータセキュリティ・データ利活用にまつわるさまざまなご相談を受けて培ってきたノウハウを生かして提案を行います。プライバシー・セキュリティ対策とデータ活用を並行して取り組みたいと思われる場合はぜひご相談ください。