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シンギュラリティとは、IT業界において、人工知能が「人間を超える転換点」という意味で使われています。2022年4月現在、AIは人間のような情緒をもつことや、柔軟にものごとに対応することはできません。そのため、シンギュラリティについてはあくまで説であり、必ず起こるものではないとされます。
この記事では、AI導入を検討している企業に向けて、AIにおけるシンギュラリティについてくわしく解説します。
シンギュラリティとは、AIが人間の知能を超えるときの技術的特異点を意味します。2005年にレイ・カーツワイル博士が提唱し、ヴァーナー・ヴィンジ氏により広められた概念です。
シンギュラリティはあくまで説のなかの一つであり、いつ、または本当にシンギュラリティが来るのか、断言できません。しかし、シンギュラリティに到達すれば、人間の生活は大きく変わると予測されます。
上記のとおり、シンギュラリティはいつ起こるのか確実な情報はありません。しかし、レイ・カーツワイル博士による「収穫加速の法則」を根拠にした予測では、シンギュラリティが起こるのは2045年と提唱されています。収穫加速の法則については後述します。
これまで、機械が人間を超えないとされていましたが、現在ではシンギュラリティは世界で注目されています。
AIブームは第一次、第二次、第三次と数回起きており、その都度AI技術は大きく進歩しました。2010年には、AIによるビッグデータの蓄積やディープラーニング(深層学習)の活用まで実現して、AIの可能性は広がっています。AIブームが起き、AI技術の高まりにともない、シンギュラリティが本当にあるのか、議論が活性化しました。
日本では、2016年6月にソフトバンクグループ株式会社代表取締役会長兼社長である孫正義氏がシンギュラリティについて言及したことにより、注目を集めています。
シンギュラリティの可能性について議論するときには、ムーアの法則、ならびに収穫加速の法則を理解することが重要です。
1965年にIntel Corporationの共同設立者である、ゴードン・ムーア氏により提唱された法則です。半導体回路の集積密度向上の技術は1年半~2年で倍増していく、といった内容で、ゴードン・ムーア氏の経験則に基づいています。
ムーアの法則は正しいとされていましたが、近年ではすでに技術の進化が頭打ちであるうえ、これ以上集積密度を上げるためにはコストがかかりすぎるとされています。そのため、ムーアの法則は終焉したと指摘する人もいます。
収穫加速の法則はレイ・カーツワイル氏により提唱され、シンギュラリティが2045年に起こるという根拠になっている法則です。法則の内容は、大きな改革が起こる間隔は徐々に短くなっている、というものです。実際に、人間の誕生~農業発明、農業発明~文字の発明、文字の発明~都市国家の間隔は、指数関数的に短くなっています。
収穫加速の法則は、技術の進化速度に注目したムーアの法則を原点としています。
シンギュラリティは確定したものではなく、さまざまな議論がなされています。シンギュラリティに関する代表的な2つの主張を紹介します。
シンギュラリティが来ると主張するおもな人物は、以下のとおりです。
人物 |
主張している内容 |
物理学者 スティーブン・ホーキング |
必ずシンギュラリティは来る 機械の持つ人だけ富を得る |
マイクロソフト創業者 ビル・ゲイツ |
シンギュラリティは来る ロボットが高すぎる知能をもつことに警鐘を鳴らす |
テスラ、スペースX社共同設立者・CEO イーロン・マスク |
AIが独裁者になる 最終的には人間を滅ぼす |
人工知能研究の権威 レイ・カーツワイル |
シンギュラリティの提唱者 シンギュラリティは必然 |
ソフトバンクグループ創業者 孫正義 |
AIは大きな革命だったが、シンギュラリティはより大きな革命 産業が再定義される |
シンギュラリティシティは来ないという人もいます。
人物 |
主張している内容 |
哲学者 マルクス・ガブリエル |
人とシステムは逆転しない 人間には知性がある |
人工知能の権威 ジェリー・カプラン |
ロボットには目標や欲求がない ロボットの能力は人間のためにある |
LeapMind CRO 兼村厚範 |
過去のAIブームでも影響は限定的 AIを過剰に煽っているうちは、シンギュラリティは到達しない |
人工知能研究者 松田雄馬 |
シンギュラリティはない 完全自動運転も実現しない |
国立情報学研究所センター長 新井紀子 |
ノストラダムスの大予言のようなもの AIはソフトウェアに過ぎない |
国立情報学研究所教授 山田誠二 |
AIは人間とともに作業しなければ使えない |
シンギュラリティが起きた場合、以下のような変化があるとされています。
現在でも、AIが単純作業を代替することはあります。しかし、シンギュラリティに到達すれば、今以上にAIがこなせる仕事の幅は増えると予測できます。具体的には、工場の生産ライン、ドライバー、事務や経理、レジ精算といったものです。
シンギュラリティにより雇用が変化すると、おのずと仕事を得られない人も増えてきます。また、AIを所持する人と、そうでない人で所得格差が大きくなるかもしれません。このような経済格差を解決するために、世界的にベーシックインカムが進む可能性があります。
ベーシックインカムが導入されれば、一定の収入は確約されるため、大きな安心感につながります。一方、働かなくても収入が手に入ることから、労働意欲の低下につながる可能性がある点は注意が必要です。
シンギュラリティに到達すれば、脳を含む人間の臓器を人工物で代替される可能性が高くなります。そうなれば、死の概念も変わるでしょう。人間の脳はデータ化できるようになる、という説を提唱する人もいます。
現在も人工関節は活用されており、IPS細胞による人工臓器への期待は高まっています。しかし、現状すべての臓器が人工物に代わる可能性は低いといわれています。
もしシンギュラリティに到達した場合、IoT分野、ロボット産業、ナノテクノロジー分野への影響は大きいです。以下でそれぞれの産業について紹介します。
IoTとはモノのインターネットを意味し、電化製品、自動車、工場の機械などのモノとインターネットを通じてつながり、データのやり取りを行うことを指します。IoTは、ただデータのやり取りをするのではなく、得たデータをAIによって分析や解析することが重要です。
そのため、シンギュラリティが到達すれば、IoTを活用して、より利便性の高い生活が実現が見込まれます。
現状では、ロボットを動かすためには人間の指示が必要です。AIによりある程度は自動化できますが、本当の人間のようには動けないためです。しかし、シンギュラリティが起これば、人間がいなくても自立して稼働するロボットが生まれます。
日本では高齢化が進み、労働人口は減り続けています。ロボット産業が成長することで、日本のこういった問題が解決するかもしれません。
ナノテクノロジーとは、ナノメートル単位の原子や分子ほどの大きさで制御を行う技術です。「小さい」という特性から体内に取り込めるため、AIが体内から病気の治療や検査が可能です。
シンギュラリティが到達すれば、ナノテクノロジー分野も飛躍的に進歩します。体内から制御することにより、生物の能力を越えた肉体になると予想がされています。
今後シンギュラリティが起こるかどうかを、完璧に予測することはできません。しかし、2020年代にはコンピュータの集積度は、人間の脳を超えるという予想もあります。そうなると、AI技術も進化していくでしょう。場合によっては、シンギュラリティほどではなくても2045年以前に歴史的改革が起こる可能性も、ゼロであると断言できません。
シンギュラリティはあくまで数ある説の一つで、今後も到達しないと予測する研究者も多くいます。ただ、AIには現在もさまざまな活用法があることは事実です。しかし、AIの専門知識がなければ、自社で具体的にどのように導入すべきかわからない人は多いです。
そのような場合、AIの専門企業であるEAGLYS株式会社にご相談ください。EAGLYS株式会社は、構想策定から協働してアイデアを具現化します。AIアルゴリズム設計技術やさまざまな種類のモデル設計も可能ですので、お気軽にご相談ください。