目次
感情分析AIとは、感情を分析することによってさまざまな分野や業界で活用できるAIのことです。感情を認識し分析するAIは、種類も活用方法も多岐にわたります。
今回は、感情分析AIの導入を検討している企業向けに、感情分析AIの種類や活用事例などを紹介します。感情分析AIの概要を把握するための基礎知識としても参考にしてください。
AIとは「Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)」の略語で、日本語では「人工知能」と訳されています。この中でも感情分析AIとは、学習した膨大なデータをもとに人間の感情や気持ちを読み取り、分析する機能を持ったAIのことを指します。
感情分析AIが分析対象とするものは、文章や表情、声などです。これらのデータを解析することで、文章を書いた人や声を発した人の感情を教えてくれます。
ニューロサイエンス(脳科学)の分野では、人間における感情を「気持ち、情動、気分、感情」の4つに分けて捉えます。
しかし、AIは機械であるため、感情に基づく判断をしないものです。現状のテクノロジーをもってしてもAIが感情を持つには至っていません。そのため、現状のAIはさまざまな生体反応を解析し、解析対象である人の感情を分析するに留まっています。
将来的にはAIが感情を理解し、感情にきわめて近い自意識を持つことが期待されています。
感情分析AIには、表情分析に関する2つの説が活かされています。それぞれについて解説します。
基本感情説は、1970年代に心理学者のエクマンが提唱した感情に関する理論です。基本感情説では、人間の感情を「驚き、恐れ、嫌悪、怒り、喜び、悲しみ、通常」の7つに大別しています。
現在も多くの感情分析AIモデルが基本感情説に基づき、人の感情を7つのうちのいずれかに分類するように作られています。
感情円環モデルは、1980年にラッセルという研究者が提唱した感情の分類を可視化するモデルです。
感情円環モデルでは、人間の感情は「覚醒または鎮静」「快または不快」という2つの主軸に基づいて分類されます。たとえば、覚醒した不快の感情には恐れや怒りが該当し、鎮静した快の感情には、安心やくつろぎなどが該当します。
感情円環モデルに心拍数や脳波といった情報を与え、これらを分析して感情を特定する感情分析AIも開発されています。
感情分析AIは、主に3種類に分類できます。それぞれについて解説します。
「文章」の感情分析AIは、人間の言語を処理し内容を抽出する自然言語処理の技術を用いることで文章に込められた感情を分析する手法です。
感情の込められた文章は、顧客から寄せられるメッセージだけではなく、インターネットやSNSにも存在します。、そのため、データの収集がしやすいという特徴があります。この技術は、商品レビューやアンケート内容の分析などを通じた顧客満足度の向上に向けて実用化が進められています。
「表情」の感情分析AIは、顔認識技術によって解析する相手の表情を読み取り、感情を分析します。
顔認識技術を用いることで、視線の向きや瞳孔の様子といった本人が言語化できない無意識の感情も読み取ることが可能です。この技術はマーケティングリサーチに活用されています。
「声」の感情分析AIは、解析相手の発する声に込められた感情を分析する手法です。この分析には、自然言語処理の技術だけではなく、声の大きさや抑揚を解析する技術が使われています。
声の感情分析AIは、声だけでコミュニケーションを行うコールセンターでの応対などに活用される例が多く見られます。その他にも面接や接客など、今後利用の幅が広がることが期待されます。
ここでは、具体的に感情分析AIがどのような場所に使われているか導入事例を解説します。
感情分析AIが活用される場面として、まずコールセンターが挙げられます。
コールセンターでは、AIが顧客の声を解析し、声の出し方、アクセント、息づかいといったものから顧客の満足度を読み取ります。これにより、感情的になった顧客あるいは感情的になりそうな顧客に対して早い段階でより適切な応対を行うことができます。
また、オペレーターの声を分析することで、オペレーターのストレス度合いもチェックすることが可能です。
感情分析AIはストレス管理にも活用できます。解析対象者の声の状態からストレス状態を把握し、メンタルヘルスの管理を行います。
先述のコールセンターにおけるオペレーターのストレスチェックが代表的な例です。声の状態からストレス状態をモニタリングしておくと、燃え尽き症候群の予測、予防なども可能になります。
表情による感情分析のAIは、接客を行う部署の社内トレーニングにも活用されています。
具体的には、従業員の表情を解析することによって相手に与える印象を採点する方法がとられています。専用のアプリを導入することで、時間や場所を選ばずに印象のトレーニングができます。
ロールプレイングゲームの分野で表情解析が応用されているケースもあります。ゲーム機がプレーヤーの表情を解析し、その感情に応じてゲーム展開を変化させます。
この技術によって個々のプレーヤーにあわせたストーリー展開がおこなわれ、より充実感を得られるゲームプレイが可能になります。
自動車業界では、ドライバーの状況確認のために感情分析AIが導入されています。車内の映像や声を分析することで、乗務員の感情や疲労度を判定します。
この技術を活用することで、居眠り運転やあおり運転を未然に防ぐ効果が期待できます。
企業の問い合わせ対応にAIを活用する方法として、チャットボットはすでに注目されています。近年ではそのようなチャットボットに感情分析AIが搭載されることも増えています。
画像認識エンジンを活用することで、顧客の感情をAIが推測することも可能になりました。現在では顧客の感情をAIが読み取ることで、より円滑なコミュニケーションを図れることが期待されています。
マーケティングの分野では、顧客アンケートの分析に感情分析AIが使われています。
一方で人事の分野では、社内文書や人事面談、日報といったものが分析の対象になっています。
いずれもディープラーニング(深層学習)によるテキストデータの分析から書き手の感情を理解して、適切なマーケティングや人事業務に活用します。
企業が顧客の感情を分析することで、販売促進につなげることも可能です。この場合、コールセンターの通話記録や商品・サービスへのユーザーレビューといったものをAIで解析し、顧客がどのように考えているかを予測します。
顧客の感情に沿った販売促進をおこなうことで、施策の精度を改善することができます。
感情分析AIには、課題点もあります。それはAIでの安定した感情分析に対する懐疑的な見解があることです。
たとえば、感情の表現は文化によって異なる意味を持つ場合があります。ひとつの表情から受け取れる感情は必ずしもひとつではなく、文化圏による違いも出てきます。
さらに、AIで人間の感情を正確に読むことがどこまで許容されるかという点も論点のひとつです。いずれにしても感情分析AIを開発するには、利用用途に応じたカスタマイズが必要です。
感情分析AIは、今後さまざまな分野での活用が期待できます。
マーケティング分野だけでなく、医療やメンタルヘルス分野での活用も考えられます。感情分析AIによって体調不良やメンタルの不調を早期に発見することができれば、治療を行い重症化を防ぐことができます。医療現場をはじめとして、各分野で問題化しつつある少子高齢化に伴う人手不足の解消にも寄与するでしょう。
感情分析AIは、今後あらゆる場面での活用が期待されています。しかし、文化圏による違いや精度など課題が残されているのも事実で、用途に応じた適切なカスタマイズが必須となります。
感情分析AIは複雑なので、既存のリソースで導入できない場合があります。感情分析AIの活用を目指すのであれば、AI開発に実績のある企業へ相談することでスムーズに進めることができます。
EAGLYSでは、構想の段階からアイデアの具体化まで伴走して進めております。また、問題解決力に優れた事業開発陣と世界トップレベルの技術力を持つエンジニア陣との連携により、最適なAIモデルの開発が可能となっています。
幅広い知識を持っておりますので、感情分析AIについて気になる点があればお気軽にご相談ください。