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クラウドAIとは、クラウド上で学習・処理されるAIのことです。エッジAIと比較されることが多くあり、それぞれ異なるシーンで活用されています。
この記事では、AI導入を検討している方に向けて、クラウドAIとエッジAIの違い、それぞれのメリット・デメリット、活用事例を紹介します。今後の業務効率化にお役立てください。
クラウドAIは、AIが搭載されたクラウドにデータを送信することで学習や分析ができる技術です。
情報処理の流れとしては、スマートフォンやセンサーといった端末でデータ収集を行い、そのデータがインターネットを経由してクラウド上のシステムに送信されます。送信されたデータはクラウド上でデータ処理され、結果を端末に送信する仕組みとなっています。一般的に「AIサービス」と呼ばれているのは、クラウドAIを指していることがほとんどです。
身近なところだと、「三大クラウド」と言われるMicrosoft AzureやAWS(Amazon Web Service)、GCP(Google Cloud Platform)といったサービスにもクラウドAI技術が活用されています。
エッジAIの「エッジ」とは「端」という意味で、端末のことを指しています。つまりエッジAIとは端末に搭載されるAIのことです。端末にAIを搭載し、そこで学習や推論を行います。端末で処理されたデータは、学習に必要なものを選別してサーバ上に保存されます。
エッジAIについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
クラウドAIとエッジAIで大きく異なるのは、データを処理するAIを置く場所です。クラウドAIではクラウド上で情報処理が行われるため、全てのデータをクラウドに送信した上でAIによる学習・推論が行われます。それに対して、エッジAは端末上で情報処理を行うため、必要なデータのみをクラウドに送信して管理することが可能です。
クラウドAIとエッジAIはそれぞれ特徴が異なるため、メリットとデメリットにも違いがあります。まずは、クラウドAIのメリット・デメリットから解説します。
クラウドAIはデータ処理をクラウド上で行うため、大量のデータを処理することができるのがメリットです。また、パソコンやスマートフォンなどの端末の処理能力を超えるような複雑な処理を行うことも可能です。さらに、データ管理もクラウド上で行うため、容量などの拡張も容易に行えます。
分析や学習をクラウド上で行うため、自社サーバや端末への負担が少ないのもメリットとして挙げられます。高性能な端末を自社で用意するコストがかかるほか、端末の導入や入れ替えといった管理にも工数がかかります。しかし、クラウドAIではクラウド上のシステムを活用するため、端末の管理にかかる負担や端末・サーバ代などのコスト軽減が可能です。
クラウドAIでは、膨大な量のデータ送受信が行われる場合もあるため、通信速度や処理速度に影響する可能性があります。また、通信量の増加とともに通信コストが高くなってしまうという点もデメリットです。
さらに、ネットワーク障害といった予期せぬ事態が起きた場合に備えて、事前に対策を検討しておく必要があります。
クラウドはインターネット上にあるため、情報漏洩やサイバー攻撃などのセキュリティリスクが考えられます。インターネットを介してデータをやりとりするため、機密情報を取り扱うには危険性が高く一定のリスクがあるといわれる場合もあります。
クラウド上でのセキュリティリスクを恐れ、極端に機密情報を排除すると、AIを導入して実現したいことから遠ざかってしまう可能性があります。
クラウドAIの導入で課題解決や新たな価値創出を目指すのであれば、機密情報も扱えるように秘密計算にような暗号処理を活用してセキュリティ対策を行うことが大事です。
※情報セキュリティについて、詳しくはこちらの記事で解説しています。
続いて、エッジAIのメリットやデメリットを解説します。
エッジAIは、クラウドAIのようにクラウドとのデータのやり取りを行わないので、タイムラグが発生しません。端末に搭載されているAIを活用してデータを処理・分析することでリアルタイムな判断ができるため、迅速な対応が求められる作業にも活用可能です。
エッジAIは、データ処理を端末で行い学習に必要なデータだけをクラウド上に送信するため、クラウドAIのように膨大な量のデータを送信する必要がありません。そのため、やりとりするデータの容量が小さくなり通信コストが抑えられます。
また、端末上でデータ処理を行った後選別された情報だけをクラウド上に送信するエッジAIでは、重要な情報もインターネットを経由せずにAI処理可能です。そのため情報漏洩のリスクを低減させ、セキュリティの強化にも繋がります。
エッジAIは、データ処理を端末で直接行いますが、端末に搭載できるCPUやGPUなどのリソースは限定的です。そのため、膨大なデータを処理することが難しくデメリットとなります。また、端末で推論をし、クラウド上で学習を行うといったように分けて処理を行うため、複雑な処理や高度な予測にも向いていません。
エッジAIは端末にAIを搭載するため、そのシステム自体が複雑になります。そのため、設計・管理・保守運用が難しくなる点はデメリットです。スムーズに運用していくためには、社内に専門知識を持った人材を確保する必要があります。また、外部の会社に委託して運用していく方法もあります。
それぞれにメリット・デメリットがあるクラウドAIとエッジAIですが、活用できる場面も異なります。まずはクラウドAIの活用事例から紹介します。
クラウドAIは、商品の在庫管理に活用可能です。天気や立地、イベントなどの条件や、過去の売上や顧客属性、需要の変化などを分析し、顧客のニーズを予測します。データを元にした需要予測ができるようになれば、経験則や感覚に頼らない正確性の高い在庫管理が可能です。このような高精度の需要予測は、ニーズに合わせた商品開発にも活用できます。
製造業では、機械や設備に不具合がでてしまうと生産ができなくなるというリスクがあります。そのリスクを軽減するためには機械保全の強化が必要ですが、そこでクラウドAIが活用できます。カメラや振動センサーなどを活用して機械の様子をデータ化し、クラウドAIで分析することで、いち早く異常を検知し故障やトラブルなどを未然に防ぐことが可能です。
クラウドAIは農作業にも活用できます。農作物の生育や温度など、様々な要因のデータをクラウドAIで分析・管理することで、培養液や水の与え方、収穫のタイミングなどを、適切に判断できます。これによって品質や収穫量が安定するだけでなく、これまで属人化していた管理作業の負担が軽減され他の業務へリソースを割くことができます。
クラウドAIの活用事例について紹介しましたが、エッジAIも多くのシーンで活用されています。ここからは、エッジAIが実際にどんな場面で活用されているのかを紹介します。
自動車の自動運転にはとっさの判断が必要となるため、エッジAIが活躍します。自動運転では、カメラやセンサーで周辺環境の様々なデータを取得し、リアルタイムに判断して運転に反映させる必要があります。データの処理にタイムラグが生じると事故につながる危険性があるため、迅速な処理・判断可能なエッジAIの活用が注目されています。
エッジAIは、スマートフォンへの導入も注目されています。最新機種にはニューラルエンジン(機械学習の処理に特化したシステム)が搭載されているものがあります。ニューラルエンジンでは、カメラやマイクからデータを収集・分析することで、撮影データの判別機能や言語解析の強化につながります。
ドローンにエッジAIを搭載することで、より高度な自動操縦が可能となります。人や建物などの障害物を認識することができ、イベントでの上空からの監視や、人が立ち入ることのできない場所の点検・保守などに役立ちます。エッジAIを活用したドローンの技術により、広い場所の管理や監視ができることで、人手不足の農業支援などにもつながっています。
クラウドAIとエッジAIは活用できる幅が広く、どちらも今後の社会では欠かせないAI技術といえます。
本記事で解説したクラウドAIやエッジAI以外にも、AIには様々な種類があります。自社の目的にあったAIを導入することで、業務の効率化やコスト削減はもちろん、新たな価値の創出が可能となります。
ただし、自社の構想を実現するためにどういったAIの導入を進めていくのか迷う方も少なくありません。EAGLYSでは構想策定から伴走してアイデアを具現化していますので、より確実に成果を上げることができます。
AI導入で気になる点やお悩みの点がございましたら、お気軽にご相談ください。