目次
業務の大幅な効率化や業績向上などを達成するために、AIをビジネスに活用しようと考えている企業が近年増えてきています。この記事では、AI導入を検討している企業の担当者に向けて、AIビジネスの現状やAIを導入する際の流れ、注意点などについて解説します。ぜひお役立てください。
AIとは「Artificial Intelligence」を略した言葉で、日本語に訳すと「人工知能」です。明確な定義は決まっていませんが、一般的には「人間の知能を模倣し、コンピュータで再現する技術」とされています。つまり、コンピュータが人間のように学習を行って、その学習した知識をもとに推測、判断を行うことを指します。
これまでは実証実験としてのAI導入がほとんどでしたが、近年ビジネスシーンにおける実用化が進み、さまざまな分野でAIの活用が本格化しています。AI技術の発展により、業務の効率化が可能になり、従業員の負担を少なくしてヒューマンエラーを減らすことに成功しました。AI技術を利用したシステムなども数多く開発されるようになり、従来よりもAIを活用しやすい環境が整いました。
令和2年度の総務省の調査によると、AIを導入しているもしくはAIを導入する予定があると答えた企業は23.9%でした。また、民間企業による別の調査においても、日本では30%以下とAI導入率はさほど高くないことがわかります。
実際、アメリカや中国、インドなどを筆頭とするAI導入が進んでいる諸外国と比較すると、日本のAI導入率はかなり低い割合であることが分かります。GDPランキング上位の国以外でも、AI研究がさかんに行われているスイスやオーストリアと比較すると、日本は最も低い割合になっています。これは、日本におけるAI活用があまり進んでいないこと以外にも、新興国では最新技術を取り入れやすい環境にあることも要因のひとつです。これを、「リープフロッグ現象」と呼びます。
AI導入を行った企業では、19.9%が「非常に効果があった」、59.9%が「ある程度効果があった」と答えており、効果があると感じた企業の合計は79.8%と、高い割合を示しています。導入率こそ低いものの、満足度は高い傾向にあります。
出典:令和2年情報通信白書
出典:職場のAI利用率、世界10カ国で日本が最下位 民間調査|日本経済新聞
ここでは、AIが必要とされる背景と導入によるメリットを解説します。
特に中小企業の場合、人手不足の問題を抱えているところが多く、少子高齢化による労働人口の減少なども起因して、人を雇いたくても雇えないというケースが少なくありません。AIの導入を進めることによって、今まで人が担ってきた業務をAIが行えるようになり、人手不足の解消につながります。
人が業務を行う場合には、体調や労働時間、モチベーションなどによって生産性にばらつきが出てしまい、ヒューマンエラーを起こす可能性もあります。しかし、AIであれば、常に一定のパフォーマンスで業務を行うことができるためヒューマンエラーの心配もなく、結果的に生産性が向上します。
生産性を維持することができれば、業務のめどが立てやすくなるため、計画通りに進められます。
企業は様々な形式や多くのデータを持っていますが、その膨大なデータを業務に活用できていないところが多くあります。
画像や音声データなども含め、AIによる分析を行えば、膨大なデータをビジネスに適切に活用することができるようになり、業績の向上につながります。また、効率の良いマーケティングや、データに基づいた経営戦略の立案など、さまざまな分野に活用ができます。
AIの導入によって先進的な取り組みが可能となるため、競合他社よりも突出した業績が出せるようになります。企業として進化し続け、グローバルな競争力を身につけるには、市場や顧客のニーズをAIで分析して把握するなど、AIの導入によるビジネスの成長が必要です。また、新規事業参入の際にもAIは活用できます。つまりAIの導入が進むことで、企業の抱える課題を解決するだけでなくビジネスの成長にもつながっていきます。
AIをビジネスに導入する際には、まず手順を確認していきます。ここでは、AI導入の5つのステップについて解説します。
まずは、自社が抱えている課題をリストアップします。AI導入の目的を洗い出して把握するために重要なステップです。課題や目的を具体的に把握することによって、自社の課題解決や目的達成に役立つ形でAIを導入することが可能となります。
自社の課題を整理したら、その課題はAIによって解決可能なものかどうかを検討します。類似の事例がすでに存在している場合には、その事例を参考にして、解決できるかを考えます。
次に、AIを自社で開発するか、外部に委託するかを決めます。AI開発ができる人材が自社にいない場合や、セキュリティリスクなどを考慮すると、自社開発のハードルは高いため、AI導入を進める際には外部委託を行うケースが多いです。外部委託を行う場合、パートナー企業がAI開発の知見や実績を持っているかどうかや、自社の課題解決につながるサービスやシステムを提供しているかどうかなどを見て選ぶようにします。
データ量が多ければ多いほど、AIが行う予測の精度は高まります。まず、収集したデータを分析できる形にするために、データの前処理を行います。全行程のうち、大部分が前処理に割かれているといわれるほど重要かつ手間のかかる工程です。AIの開発については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
AI開発の基礎知識|開発の流れ、ビジネスに役立つこと、活用事例を解説
データを収集し前処理を行ったら、次は試験運用をします。試験運用の結果をもとにして評価を行い、必要な場合は、学習させるデータをさらに増やしていきます。何度も繰り返しテストをすることによって、パフォーマンスが向上し、実用可能なレベルになります。
AIモデルが実用可能なレベルまで向上したら、実際に稼働させてパフォーマンスを検証します。また、導入後も検証を行い、最新のデータを学習させ続け、システムを継続して見直すことによってAIを最適化します。
AIをビジネスに活用する際には注意点があります。ここでは、AIを活用する際に注意したいポイントを4つ解説します。
AIを導入する際には、なぜAIが必要なのかについての目的を明確にする必要があります。AI導入自体を目的にするのではなく、課題解決や目的達成のためのツールだと考えます。そのため、自社の課題を解決するために、どのようにAIを活用するべきなのか検討を行います。
AI導入にはセキュリティのリスクが伴います。例えば、ハッキング、情報漏えいなどのリスクが想定されますが、これらのリスクを減らすために、企業はAIの専門知識や技術を有する担当者を常駐させるなどの対策を講じる必要があります。データを安全に分析できる環境を構築するために予想以上のコストがかかる場合もあります。
また、自社のクラウドのセキュリティレベルが高いことから、AIの学習をスムーズに行えないなどの問題が起こる可能性があります。
EAGLYSの「DataArmor® Gate AI」ならクラウド上でのセキュアなAI活用を実現できます。
AIを活用したシステムにトラブルがあった場合、責任の所在がわかりにくくなります。例えば、自動運転の車が事故を起こしてしまった場合、責任は車に乗っていた人にあるのか、それとも車を作った企業にあるのか、責任の所在があいまいになる恐れがあります。
法的にも明確に整備されていないことがあるため、事前に責任の所在を明らかにし、線引きをしておきます。
AIを導入するには、AIの知識や技術、リテラシーを持った人材が必要となります。AI技術は発展を続けており企業への導入も進んでいますが、AI人材は不足傾向にあります。そのため、必要なAI人材を採用し、社内での育成も行って人材を確保します。また、一連の業務を外部委託するのも選択肢のひとつです。いずれかの方法で自社に合った形でAI人材の確保を行います。
AIはさまざまな業界で活用されています。ここでは、業界別にAIの活用事例について紹介します。
製造業界では、発注量や1回あたりの製造量が適切に調整できない場合、在庫を過剰に抱えてしまう、品薄状態や欠品が発生する、などの在庫管理に関わる問題を抱えていました。
しかし、AIを組み込んだ発注管理システムを導入することによって、商品数を適切に調整することができました。さらに、過去の販売データや直近の市場動向をAIで分析することで在庫管理と発注量を適切に調整できるようになったため、コスト配分の最適化を実現できました。
その他に、製造現場でのAI導入は、製造ラインで発生する不良品の検知にも使われています。画像やセンサーを用いることで製造された商品の状態をAIで分析できるようになり、エラーのチェックを行い、工員による不良品チェックの負担を軽減することができます。
飲食業界では、予約の無断キャンセルによる食品廃棄や利益喪失などが負担になっていましたが、AIでの来店予測や自動メールによる予約確認を活用することによって、課題の解決につながりました。
また、来店者数の予測が難しいなどの課題もありましたが、AIに過去のデータや天気予報などを分析させることによって、来店者数の予測が可能となり、混雑具合を加味した開店準備を行うことが出来るようになりました。
介護業界では、利用者の見守り業務が行き届かないなどの課題がありましたが、AIによる画像認識カメラを導入することで、プライバシーを侵害しない範囲で行動の観察や解析が可能になりました。AIが異常を検知した場合に介護者に通知が届くシステムで、効率的な見守りが可能です。
また、対象者のデータを入力すると、最適なケアプランが提案されます。そのためケアプラン作成の負担軽減にもつながります。
小売業界では、必要な在庫数の予測が難しいなどの課題がありました。顧客データや天気、曜日などについて、AIで分析をして予測を行うことで、適切な発注が可能となり、在庫管理の効率化や機会損失の減少につながりました。
また、店内カメラで撮影した顧客の行動について、AIが分析を行うことによって購買行動などを知ることができ、それを利用して適切な商品のレイアウト方法やプロモーションなどに活かしています。
ビックデータやAIの活用がビジネス現場で浸透し始め、AI活用に取り組む企業は増えつつあります。
自社の課題解決やビジネスの成長には、AI導入は不可欠です。スムーズに自社ビジネスにAIを導入するためには、外部の開発会社にサポートを依頼することも選択肢の一つになります。
EAGLYSでは、構想策定から協働してアイデアを具現化できます。また、AIアルゴリズム設計技術に優れており、さまざまな種類のモデル設計が可能です。AI導入を検討している場合は、ぜひお問い合わせください。