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小売業界では店舗の売上の低迷や人手不足が問題になっており、業務改善の必要性が増しています。利益率を向上させるためには、何らかの施策が必要です。この記事では、小売業でAIを活用したい人に向けて、AIを使うメリットや具体例などを解説します。あわせて注意点についても解説するため、ぜひ参考にしてください。
業界に限らず、ビジネスにAIを積極的に活用するケースが増えています。AIは仕事内容を自動で学習できるように変化しており、今後はますます活躍の場が広がる可能性があります。リテールAI市場は、2023年度に89億1000万円まで成長する見込みです。
小売業においては、これまでEコマース分野でAIの活用が盛んでした。近年では、店舗でもAIの活用が進んでいます。今後も小売業界のより幅広い分野でAIの活用が期待されています。
小売業界においては人手で補っていた業務や勘と経験が重視され、人手で補っていた業務も多く残っており、AIによる属人化業務の代替が期待されています。また、顧客の行動分析による戦略的な店舗経営に取り組む企業も増える等、小売業でAIを活用する際にはさまざまなメリットが存在します。以下では、小売業においてAIを活用するメリットを詳しく解説します。
AIを活用することで、顧客の行動データが分析しやすくなります。決済データやECサイトの回遊履歴を活用することで、どのような商品に興味を持ちどのように行動するか予測できるようになるため、売れやすい商品の特徴も把握できますし、顧客の行動パターンを予測することで具体的な店舗戦略を打ち出しやすくなります。AIの活用による店舗全体の売上アップも期待できます。
混雑しやすいレジや駐車場のデータをAIで分析すれば、混雑状況を数値で可視化できます。店舗の運営者が混雑解消の対策を講じることで、顧客にとって快適な店づくりに活かすことができます。混雑発生を予測することで、コロナ渦での来店時の不安を取り除き、来店率向上や顧客体験の向上にもつながります。
過去の売上データをAIで分析することで、今後の売上や需要の予測を具体的な数値で想定することができます。売上データだけでなく地域住民の特性や経済状況などのデータも組み合わせれば、より実情に即した分析が可能になります。過不足なく在庫供給ができるようになり、効率的な店舗運営につなげられます。
商品の売れ行きデータを分析することで、発注業務の効率化に役立てることもできます。従来は、人間の経験や過去の履歴を基にしたルールベースで在庫管理を行う場合が多く、欠品が発生したり大量の在庫を抱えてしまう等、正確性に課題を抱えていました。棚の欠品状態や備蓄数・POSデータ等を掛け合わせてAIで分析することによって、必要な発注数を自動的に把握することができるようになり、発注業務が効率化されるだけではなく在庫管理業務の簡略化にも役立ちます。
少子高齢化の影響で労働人口が減少しており、小売業においても人手不足の問題が顕在化しています。店舗運営での人手不足を解消する目的では、例えばレジ業務を完全に自動化するAIはすでに多くのコンビニやスーパーをはじめとする小売店舗に導入されていますし、無人受付も各種施設利用の際に目にすることも増えました。少ない人員で店舗を運営できるようになり、限られた従業員に過重な負担を強いられないことで、働きやすい職場環境の整備につなげられています。
小売店では、提供する商品の品質に差が生じてはいけません。従来は、店舗スタッフや倉庫スタッフがひとつひとつ検品していました。しかし、AIの画像判定を活用すれば、商品の品質のチェックにかかる時間を大幅に削減できます。ヒューマンエラーによるチェック漏れも防止でき、商品の品質の向上や平準化にもつなげられます。
すでにさまざまな小売店がAIを導入しており、業務効率化や売上アップなどを実現しています。ここでは、AIを導入している小売店の事例について紹介します。
大手スーパーのベイシアは、AIの導入によりレジの混雑を解消する仕組みを導入しました。これにより、入店客数、時間毎、レジ毎の混雑度、レジ待ち時間などの可視化に成功しています。
レジ付近には精算の様子を見守るスタッフを1人配置しており、AIの分析結果をもとにレジの数を調節しています。混雑しそうな場合は応援レジを開け、混雑による混乱が起きないように対策するのがスタッフの仕事です。
大手コンビニのローソンは、広告の配信のためにAIを活用しています。会員のデータを活用し、購入履歴、性別、年代、価値観などをAIで分析しています。それぞれの人が特に興味を持ちそうな商品についての広告を配信する仕組みです。
広告は、アプリやレシートを通じて配信されています。クーポンの発行にも対応しました。AIを活用した広告の配信により、会員の購入率は12倍になっています。
大型スーパーのイトーヨーカドーは、商品の発注のためにAIを導入しています。AIを搭載している商品発注システムを導入し、データを活用してどの商品をどれくらい発注するか判断できるようにしました。AIが分析するデータは、価格、陳列棚の数、天候、曜日、客数など多岐にわたります。
AIを搭載している商品発注システムの運用により、商品の欠品率は27%も減少しました。また、社員の労働時間は3割削減でき、人件費も少なくなっています。
ドラックストアのウエルシアは、万引きの防止のためにAIを活用しています。全国の万引き被害総額は年間数千億円にものぼり、軽視できない状況にあります。そこで、AIによる顔認証ができる監視カメラを導入し、万引の常習犯の来店を避ける取り組みを開始しました。
個人が特定されることなく行動パターンを分析できるため、プライバシーにも配慮できています。死角にも対応できるようになり、万引き防止のための声掛けもしやすくなりました。
高輪ゲートウェイ駅に併設されたTOUCH TO GOは、AIの活用により無人決済に対応している店舗です。店舗では弁当、菓子、飲料などを扱っています。セルフレジでは、重量センサーにより商品の種類と個数を管理する仕組みです。
また、天井に監視カメラを設置し、顧客の行動を追跡しています。これにより、セルフレジのスキャン漏れも素早く検知できます。店舗に常駐するスタッフの数を削減でき、より効率的な店舗運営を実現しました。
AIをビジネスで導入する際は課題がつきものです。ここでは、小売業においてAIを導入する際の注意点や検討時のポイントについて具体的に解説します。
そもそもAIは単機能であるため、学習していないロジックは判断できず行動を起こせません。だからこそ、AIに対してどのような機能を求めるか検討し、適切に学習するように設計する必要があります。
現代ではAIエンジニアでなくともAIを設計できるパッケージ商品も存在しますが、本当に実現したい動きを全て実行できるか、アウトプットの品質はどこまでを求めるか等、検討事項は多数存在します。
AIを導入することで本来実現したいゴールは何か、その時のペインはAIによってどのように取り除けるのか等を構想段階から細かく検証することで、ビジネスでのAI実装を成功に導くことができます。
EAGLYSではさまざまな業界でのAI解析を支援してきました。事業アイデアの構想策定から具現化し、AIアルゴリズム設計まで支援してきた豊富な実績を活かし、AIに関するお悩みにお応えします。
AIを導入する際はさまざまなコストがかかります。AIを搭載したシステムそのものの導入費だけでなく、AI導入によって業務オペレーションを再構築するための費用も発生します。そのため、一般的には全社的な運用に入る前に一部の業務に限定して導入し、試運転が実施されます。
また、AIによる業務効率化が進めば社員の解雇や人員整理を行う可能性もあります。社員から反発がある場合、適切に対応しなければなりません。
AIを活用するうえでは、人材の登用や育成が必要不可欠です。専用のカリキュラムや研修を用意し、AIを活用できる人材を育てることが大切です。また、店舗や倉庫など運営する場所に応じてテストを繰り返さなければなりません。AI技術は日々進歩しているため、それに対応するには社員も最新の技術をキャッチアップし続ける必要があります。
ただしAIに精通している人材がいなくても、社内育成に対応できるベンダーに依頼すればスムーズにAIを導入できます。
小売業ではAIの導入に取り組む企業が増えています。属人的な業務を均質化したり、在庫管理や需要予測を行なうことで生産性向上が期待されています。ただしAIを導入する際は上述したような注意点があるため、AIの設計を依頼する企業の選び方も重要です。
EAGLYSではさまざまなAI開発プロジェクトを社会に実装してきた経験から、顧客のニーズを捉えて何が必要か判断し、適切なアルゴリズムを選んでモデルを設計します。
小売業でのAI導入を検討される際には、構想段階からアイデアを共有してさまざまな角度からの検討が必要になりますので、ぜひEAGLYSに相談してください。